「火曜日、恋と鋏(Tuesday, I'm in love)」

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 ふいに入り口のベルが大きくガランと鳴った。  今日やってる? と商店街の不動産屋のおじさんが入ってきた。 「すみません、今日はちょっと両親いないんで僕が切ることになりますけど」 「ああ、息子さんかあ……おっきくなったなあ。じゃあ、せっかくだからお願いしようか」  航くんは慌ただしく散髪の準備を始めたので、僕は「もう帰るね」と椅子から立ち上がる。  足元にさっきまで僕の一部だった物が散らばっている。 「またおいで」 「あ、お金……」 「いらないよ、俺が呼んだんだし」  店の外に出て少し歩いて、振り向いて。  当たり前だけどそこの航くんの姿はなかった。
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