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ふいに入り口のベルが大きくガランと鳴った。
今日やってる? と商店街の不動産屋のおじさんが入ってきた。
「すみません、今日はちょっと両親いないんで僕が切ることになりますけど」
「ああ、息子さんかあ……おっきくなったなあ。じゃあ、せっかくだからお願いしようか」
航くんは慌ただしく散髪の準備を始めたので、僕は「もう帰るね」と椅子から立ち上がる。
足元にさっきまで僕の一部だった物が散らばっている。
「またおいで」
「あ、お金……」
「いらないよ、俺が呼んだんだし」
店の外に出て少し歩いて、振り向いて。
当たり前だけどそこの航くんの姿はなかった。
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