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髪を切っている間はいつもの飄々とした航くんとは違う、美容師としての真剣な表情で。
その表情をいつも見入ってしまう。
耳の後ろや首筋に触れる、航くんの指先。
心地好くてもっと触って欲しいのに、実際触れられると変に緊張して触れられたとこが熱くなる。
「若いから、そんなに凝ってないよね」
散髪後に僕の肩を揉むけど、本当は身体中が緊張しっぱなしで全然リラックスなんか出来てない。
こんなに落ち着かないのに、髪を切ってもらうのは航くんじゃなきゃ駄目だって思うから。
自分は馬鹿になってしまったのかもしれない。
「はい、高校生だから2500円ね」
ありがとう、じゃあねって店の前で別れて、少しして振り返ると航くんはまだ店の前にいて、僕に気付いて手を挙げた。
切られたての毛先を指で触りながら、足早に家へ帰る。
次に髪を切るのはおそらく二ヶ月後か。
二ヶ月に一度しか逢えないのは寂しい。
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