第1章

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 あれだけ掘られた穴を埋めるのだから、結構の労働だろう。だというのに、本当にあの少女一人に任せてしまってもいいのだろうか。 「俺もあいつにあったばかりの頃はそう思っていたんだけどな」  スタードはフードの奥の双眸を遠くへ向けながら、思い出すかのように呟いた。 「いや、でも……」 「試験の成績、すごかったな」  スタードは強引に話題を変えた。 「筆記試験四百点って、聞いたことないぞ」  四百点中四百点。 「実技は〇点なんですがね」  六百点中〇点。  計四百点と、平均点の六百点をかなり下回る点数が僕の公務員試験での採点だった。よほど適正試験で低かったものが多いのだろうか。いまでも試験合格はドッキリなのではないかと疑っているほどだった。  試験の採点が低かったのは単純明快な理由。  僕が魔法を使えない事にあった。  この世界には、先天性なり後天性なり、魔法を使えない人間がいる。    体が弱く健康を維持するために放出できなかったり、魔力を貯蓄する器のようなものが破損していたり、魔力を得ることのできない体質だったりと、理由は様々だ。  理由は様々でありながら、魔法を使えない者たちに対する蔑称はたった一つ。  それが<加護なし>だ。  昔、そういった魔法を使えない人間は、前世で悪い行いをしたからそう言った呼び方になり、未だそれが定着している。まあ、たしかに<加護なし>に走りやすいし、そうでもないと理不尽すぎて納得いかないよなあ。  その<加護なし>であるが故の、実技〇点。 「まったく魔法が使えないのか」 「いや、タバコの火につけるくらいは」  <加護なし>と言えども、まったく使えないものなんて多くない。日常には支障が出てしまうが。   魔力とは、森羅万象ありとあらゆるものに備わっており、それらを養分とすることで魔力を回復することもできる。  要は、寝ることはもちろん呼吸をするだけで魔力は得ることもできる。   僕の場合は先に述べたうちの、魔力貯める器がないタイプのため、体内に取り込んだ瞬間魔力を魔法として放出することができれば小規模のものならできないこともない。が、 「試験で通用できるほどのものはできません。 だから、棄権させてもらったんです」    
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