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夜間工事なのだから当然だが、シート内には明かりが灯っていた。その明かりの中に、動き回る作業員達の影がぼんやりと浮かび上がる。
そこに、骸骨がいた。見間違いではと、何度も目をこすったが、どう見ても骸骨でしかない物がそこにいた。
それらが動き回る。不気味にシート内を徘徊する。
その異様な光景に、私は小さく叫びを上げた。その瞬間、骸骨の動きが止まった。
シートがめくり上がることはないが、どう見てもこちらを窺っている気配がする。それにどうしようもない恐怖を掻き立てられ、私は一目散に家へ逃げ帰った。
* * *
およそ二ヶ月後に工事は終了した。
予想通り、建ったのはワンルームのマンションで、今は入居者を募集している。
その案内を見ながら、私は、あの夜と翌日のことを思い返した。
薄明りに浮かんだ骸骨のシルエット。それがあまりに不気味で、翌日、私は工事現場に足を運ぶと、現場監督さんに思い切って質問をぶつけてみた。
最初は、何が建つのかという当たり障りのない所から入り、工期のこともそれとなく聞く。そして、本題の夜間作業について問うと、監督さんは不思議そうに首を捻り、夜間工事など行われていないと言った。
一応、依頼主の命令で、他の業者が夜に出入りしているのではという話もしてみたが、そういう話は聞いてないし、そもそも現場は、前日キリをつけた状態から一切何も変わってはいないらしかった。
この件は、どこかの突貫工事と一緒にして、勘違いしてしまったとごまかしたけれど、夜間工事がなかったという話のせいで、私の中の疑問はさらに増した。
だったらあの、連日夜に出入りしていた作業員達は何だったのか。夜も工事が行われていたことは、近所の人間はみんな知っているのだ。なかったことにはできない。
そして、夜間工事がなかったのだとしたら、私が見た骸骨は、作業員の度が過ぎた悪ふざけではなくなるのだ。
確かに行われていた夜間工事。現場に集っていた骸骨達。
あの連中は、夜な夜な工事現場に集まって、いったい何をしていたのだろう。
その答えは、いずれこのワンルームに入居する人が現れた時に判るのかもしれない。
夜間工事…完
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