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夜間工事
近所の空き地に何か建つことになった。
工事中につき、ご迷惑をおかけします~みたいな看板が立てられ、作業車が出入りをする。
それだけならごくありふれた光景だが、そこの現場はちょっと勝手が違うようだった。
建設の期間が短いのか、夜間もやたらと作業の人達が出入りしているのだ。
周辺近所に迷惑をかけないようにしているらしく、昼はそこそやかましくても、夜間工事の時には一切騒音がしない。だからどこからも苦情は出ず、逆に、そこまで期間が短いと大変だねなんて意見も上がっていた。
でも、ある日、現場の違和感に気づいた。
通勤の際に朝・夕現場前を通るため、工事の進み具合を毎日見ている。だけど、朝見た時と夕方見た時では、はっきり進み具合の差が判るのに、夕方から朝の方の作業は、何をどう作業したのかも判らないくらい変化がないのだ。
騒音対策で、ほとんど音の出ない作業をしているから、見た目に変化がないのかもと思ったが、毎日欠かさず、夜通し作業が行われているのに、翌朝変化がないというのも妙な話だ。
そしてもう一つ妙な部分が。
普通、人員の入れ替えがあるとしても、急ぎの工事なら、昼の人と夜の人が作業の引継ぎを行うだろうに、この現場は、昼は昼、夜は夜で独立した工事が行われているのだ。
日中作業の人達が建機ごと現場を引き上げると、その一時間後くらいに夜間組がやって来る。そして作業に取りかかる。
実に奇妙な工事形態に好奇心を引かれ、私は、思い切って夜間作業の様子を見に行こうと思った。
むろん、作業現場に入るような真似はしない。ただ、外から様子を窺うだけだ。
現場の前に着くと、建物は黒っぽいシートですっぽりと覆われていた。
夜間工事の音がしないのはこれが理由だろうか。防音や埃の飛散を防ぐためのものだしとたら、かなり気を遣っている。
こんなシートを使ったら、外側への建て増し作業は無理だろうな。だとすると、夜間は内面の補強とかがされているんだろう。もしかしたら、昼と夜とで作業内容があまりに違うから、いざこざが起きないよう、あえて引継ぎはしない方針なのかもしれない。
奇妙に感じていたことが総て納得できる事柄になる。
間抜けな真似をしたなと、内心自嘲して帰りかけた時だった。
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