23人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
「ち、違うわよ!貴方を嫌ったことなんて一度もないわよ。ただ、私も貴方もこんなこと初めてじゃない?いつも身体を動かすことは、剣でもダンスでも乗馬でも私が率先して誘ってたから、今回もその、私がリードしないとって……」
「ありがとう」
王子殿下が笑ったと思った次の瞬間、私は唇を塞がれていた。
……え?
「だけど、今回は僕に任せて欲しいな」
私が答える暇も与えず、また唇を塞がれる。
そうして、夜は更けていった。
翌朝、今にも鼻歌を歌い出しそうなほどご機嫌な様子の侍女に起こされて、私は結婚10年目の初夜が無事に終わったことを悟った。
ぼんやりとする頭で、結婚から10年も経てば相手のことなんてほとんどわかっているつもりだったのに、まだまだ『夫』には私の知らない一面があったんだなぁと呑気に考えていた。
(完)
最初のコメントを投稿しよう!