第1章

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「とりあえず、いつものとこ行くか」 「作戦会議だな?」 「そんなもん、作戦も何もフィーリングでどうにかなんだろ」  一階で上へと向かうエスカレーターに乗った私のすぐ後ろに、乗り込んだのは男性三人組のようだ。その人の話声は否応なく聞こえてくる。別に聞き耳を立てているわけではない。 「で、今日のメンツは?」 「ん、俺と同じ会社のOLとその友達。写真あるよ。……これこれ。この子達」  すぐに分かった。この男性達の作戦会議の意味が。 「派手系? 地味系?」 「写真で見る限り、派手系っぽいな」  派手だの、地味だの。女を分類する言葉として発せられた言葉は正直、言われて気分の良い単語ではないなと考えている間にも、エスカレーターは上昇していく。 「派手系か。俺さぁ、先週デートした子も派手系でさ」 「デートって、いつの間にそんなのする相手見つけたんだよ」 「先月の合コンだよ。ほら、看護師とやったじゃん」 「ああ、あの子たちか。あれか、お前アプローチされてたもんな」  話を聞く限り、この人たちを分類するならば、遊び人、という職業が一番だ。そんな事を考えているうちに、一階から二階、二階から三階へと上がっていく。 「それがさ、あの子、超凄かったんだよね」 「……凄いってあっちか。本当、お前の手の早さには脱帽するわ」  うわー……。全く、本当に遊び人だ。合コンして、次のデートでもう脱がしちゃうなんて。  人類はもっと理性を持ってしかるべきだ。人間は猿ではない。 「お持ち帰りして即脱がすよりマシだろ。って、そうじゃなくて。凄いってのは、あの彼女さ、顔が、すげえのなんのって」  ……。なんて失礼な奴だ。その発言に対する嫌悪感で、私の方が凄い顔になってしまう。人の顔を凄い、と評するなんて失礼千万もいいところだ。顔の造形は整形でもしない限り、どうしようもないことなのだ。 「お前、失礼だなあ」  仲間の一人も呆れたように言っている。そうだ、もっと言ってやれ。私は心の中で最大限にエールを送る。 「いや、不細工って意味じゃなくて。というか、お前らも顔知ってるだろうが。兎に角、気合が入りすぎて凄かったんだって」  更にエスカレーターは進んでいく。頭上の案内板には五階の表示。 「は?」 「だから、気合入りすぎてて、睫毛が特盛Maxメガテン昇天盛り状態で、凄かったの。もうほんと、すげえ盛り方で」  ……睫毛? 「睫毛?」
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