プロローグ

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木々が風に心地よく揺れる季節、うっそうたる森の奥にある洞窟の奥深くで一人の男が目を覚ました。 「んー……」 彼は徐々に覚醒していく脳内で自分が何者なのか、寝ていた前の記憶を思い出す。 まず思い出したのは戦いの記憶。 数え切れぬほどの敵を殺し、数え切れぬほどの仲間を失った戦いの記憶。 そして次に思い出した記憶は、孤独。 平和になった世界で周りの者が幸せに死んでいく中、自分だけが取り残されてしまう孤独。 覚醒しきった意識の中、彼は自分の傍らに置いてあるはずのものへと手を伸ばす。 それは一振りの剣。 その感触を懐かしみながら彼は呟く。 「そうか……起きちまったか。」 その一言は、とても寂しげで。 自分は目覚めたくはなかったと。 あわよくば一生、寝たままがよかったのだという響きがこもっていた。
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