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そうして彼らは、二人並んで歩きだす。
いつもより、気持ちゆっくりとしたスピードで。
日曜日の薄暗がりに、世間の人々は、明日からまた始まる憂鬱な平日を控えて、できればこの時間がもっと長く続けば良いのに、と感じていることだろう。
理由こそ違えど、纂もそれは同じだった。
ゆっくり歩けば時間もゆっくり経過する、というわけでもあるまいに、そのときは何だかそうなるような気がした。
こんな青臭い考えが浮かんでくるのは、急に康太が纂の手を握ったからかもしれない。
それに加えてこういった添え物を施したからかもしれない。
康太:「俺には、纂が今何を考えていて、何に悩んでいるのかよく分からない。もし分かったとしても、何の力にもなれないかもしれない。」
握る手に力を込める。
康太:「だけどね、俺はどんなときでも纂の味方だし、どんなときでも纂のそばにいるから。たとえ百万人を敵に回すことになっても、君のためなら立ち向かえるんだよ。それだけは憶えておいてほしい。」
纂:「……うん。忘れない。」
彼女は手を握り返す。
ただただ愛おしいと、素直に思った。
自分をこんなに嫌いになるのと同時に、他人をこんなに好きになれるのは不思議にも思えた。
罪は罪だ。一生背負っていかなければならないことに変わりはない。
でも、いつまでもウジウジくよくよしているのは、〝背負っている〟なんて言わない。
ミツの命と引き換えに保たれたこの世界を、この愛おしい人を、自分が守ってゆくのだ。それが誠実さというものではなかろうか。
その時の康太の手が、やけにすべすべしていて触り心地が良かったのを、纂は忘れられなかった。
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