〈五〉便秘気味の彼氏

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 一定の教育目的を達成するために、教師が児童、または生徒、または学生に向けて、知識や技術を計画的・組織的に伝授する施設。 における、施設ごとに有する複数の教科・科目の中からそのいずれかに属する、一定の時間に継続して知識・技術を伝える割り当ての、一日に決められたノルマを終えた後、 纂と陸巳は、つまり放課後に彼らは、例の男を訪ねてあの橋へと向かった。 世界の何たらについて、色々と問い質すためだ。 男:「耳の調子はどうかね?」 何の前置きもなしに男は問うた。 彼らが一昨日のショックから立ち直れたかとか、《保衡者》としてやっていく覚悟はできたかとか、男には僅かとも興味をそそられる事柄ではないらしい。 自分の耳が、世界のバランスの乱れを察知するセンサーであるのを纂は思い出した。 纂:「特に異常は無いわ。」 男:「そうかね。それならば言うことは無い。」 男はこの日も、橋の欄干に背をもたれて地面に片膝を立てて座っていた。 男:「世界の均衡は保たれた。祝福すべきことだ。」 人の死によってもたらされたことを〝祝福すべき〟だとのたまう男に、纂は腹の奥がグッと熱くなるのを感じたが、口には出さずに我慢した。 小言を挟んだところで意味はない。 この男に、尋常な感性など備わっていないのだから。 陸巳:「色々お聞きしたいことがあって、今日はお訪ねしたのですが、よろしいでしょうか?」 男:「構わんよ。もとよりそのつもりで、私はここにいるのだからな。」 地面に反射させた声で男は応えた。
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