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陸巳:「あの後、僕らもそれぞれ自分なりに反芻してみました。ですから、バランスが崩れると世界も崩壊に近づくとか、そのバランスを修正するには周囲の人たちの幸福感を調整しなくちゃいけないとか、それを今度は僕らがやらなくちゃいけないとか、そこらへんのことは重々承知したつもりです。
この目で嫌というほど見てきましたから。」
男:「それは何よりだ。」
陸巳:「でも、腑に落ちないことがあるんです。僕ら《保衡者》が幸・不幸のバランスを修正すれば、世界は全部元の状態に戻るんですよね?」
男:「そうだ。」
陸巳:「ではどうして、あのお婆さんが亡くなったという事実はリセットされないんでしょう?」
これは、纂と陸巳が事前に打ち合わせた質問だった。
思いついたのは纂の方だが、彼女に質問させると熱くなりすぎる危険性があったので、陸巳が代弁することにした。
纂が生理的に男と話をしたくないというのもあった。
男:「私が、世界を元の状態に戻すための手段として、老婆を死なせたからだ。」
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