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男:「だから今後、君らで自主的に保衡行為をする際は、よく考えてからにすると良い。決して取り消しが効かないのだからな。それがたとえ周りから咎められたり称賛されたりすることはなくとも、この世の事実の中では唯一、確かなものとして居残る。」
冷静に男は進言する。
男:「まぁ、〝書き換え〟を知って間もない君らにとっては、やってしまったことは取り消せないというのが標準であろうから、あまり意味のない助言ではあるがね。」
纂:「ねぇ、思うんだけど…」
纂の口調にどこかただならぬ雰囲気を感じ、陸巳は一歩下がってファイティングポーズを取る。
纂:「何やってんの?」
陸巳:「いや…またキレるのかと思って。」
纂は男に向き直る。
纂:「聞くまでもないことだけれど、あなた、絶対に取り消せないって知ってて、棚…あのお婆さんを手にかけたの?」
男:「無論だ。」
纂:「テレビゲームみたいにリセットされるこの世界で、ただ一つ、やった瞬間にオートセーブが適用される事項だと知ってて、殺したの?」
男:「無論だ。」
纂:「一つの命が永遠に失われることも、あなた自身がこれ以上ない罪悪感に苛まれることも、わきまえたうえで?」
男:「愚問だ。」
纂:「そう、なら……どうかしてるわね。やっぱり。」
眉間にしわを寄せる纂。
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