第1章

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「なあ、俺、最近、変な夢を見るんだ。」 俺は実家ででコウジと酒を酌み交わしている。 「夢?どんな?」 「俺が、虐待を受ける夢だ。夢の中では俺は幼児で、見知らぬ男に虐待されている。」 「そうなんだ。お前んち、親は優しそうだし、幼児期にそんな体験無いだろ?」 「ああ、だから不思議なんだよ。あと、腹が減って、暗い場所に放置されてる夢も見る。ずっと親が帰らなくて寂しいって思うんだ。夢の中で。」 「ニュースで酷い事件聞くからなあ。お前、感化されちゃったんじゃないの?」 「いや、最近はそういうニュース聞かないし、だいいち今までそんなニュースを見てもまったくそんな夢は見なかった。」 「あれじゃねえの?やっぱ火事のショックとかあるんじゃね?まあ、ゆっくり休めよ。有給、余ってんだろ?」 「ああ、会社のほうも、出張させての事故だったからな。完治するまではゆっくり休養しろとのことだ。」 でも、毎晩なんだ。毎晩同じ内容の夢。 俺はどこかおかしくなってしまったのだろうか。 そのことを、マイコにも話すと、心配して心療内科に通うように勧められた。 心療内科に行っても、さらに強い薬が処方されるのみで、俺はだんだんと、意識が朦朧となってきた。 日々、悪夢は酷くなって行く。もうあの火事から随分と経つ。体は回復しているというのに、精神がどんどん蝕まれている感じがするのだ。 「毎日悪夢を見るんだ。夢の中の俺は、幼児でいつも虐待されているんだ。暴力だったり、放置されてたり。すごく苦しくて悲しいんだ。」 そうマイコに訴えた。 「気にすることないわよ。たかが夢でしょう?」 マイコとは思えない言葉に俺は思わず、マイコを見つめた。 一瞬マイコの顔が歪んで見えた。そして、一瞬だが、彼女がまったく別の女の顔に見えたのだ。 「どうしたの?」 マイコがたずねた。 「い、いや。別に。なんでもない。」 きっと錯覚だ。
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