第1章

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大学生になって。初めて私は恋と言えるものをした。  偶然隣になっただけの普通の男性。さしてかっこいいわけでもない。背が高いわけでもない。何がどこが好きかと聞かれたらその解答に迷うくらい唐突にソレは訪れた。  恋愛に不器用で、変な所で上がり症で。  よく雑誌なんかで女の子達がインタビューされる。街角でもその光景をよく見かけた。貴方に彼氏はいますか。はい。好きになったきっかけは。一目惚れ?そう答える女の子は少なくない。くだらない。いつもそう思っていた。 「神崎さん」  その落ち着いた声は私を自然と笑顔にしてくれる。一目惚れも悪くないかもしれない。そう思わせてくれた男性だった。名前を呼んでくれただけで嬉しかった。貴方がくれる何気ないひとつひとつが私の中で宝物になっていた。貴方は何も意識していなかったんだろうね。  いつも優しかった。  歳の割に可愛い笑顔が好きでした。  隠しきれないその感情はすぐ友人にもばれた。恋、してるでしょう。そんなこと分からない。あの時はそう答えたんだ、確か。  この感情がもし一目惚れというものならば。一瞬で始まった恋ならば。神様。できることなら一瞬でこの恋を終わらせてください。 でも、この恋は、この初恋が私の全ての始まりだった。 あの後あんなことになるなんて想像もしていなかった。 今思えば、これがすべての始まりだったんだ…。
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