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「かーわいい、蓮児くん」
四限目の日本史が自習になった教室で、透子に昼休みの蓮児とのやり取りを話す。
「わざわざそんなことを言いにこっちまで来るあたり、本当にお姉ちゃんが好きなんだねー。なんだかんだ相手するあんたも優しいじゃん」
「はあ?」
見る人が見たら、そういう姉弟なのだろうか。わたしと蓮児が仲良しだなんて、想像もできないけど。
「てか、あんた昼休みはどこ行ってたのよ?」
「あれ、言わなかったっけ?浩人のお母さん夜勤だったから今日はお弁当なくってさ。作ってあげる約束してたから、屋上で一緒に食べたの」
「平和そうなカップルで何よりですねー」
「まあまあ、妬かないの」
「べっつにー」
透子は、最近できたという理系の彼氏と仲良くやっている。でも、わたしはなんかいけ好かない。笑った顔がなんか、嘘っぽいっていうか。本人が幸せそうで何よりだとは思うけど、とにかく、わたしはちょっと苦手なタイプだ。
「なんで男は理系が多いかな」
「数学とか、空間把握力っていうの?よくわかんないけど。そういうの、男の方が優れてるらしいし。あと、地図とか読むのも男の方が得意だとか」
「詳しいね。まあ、確かにわたしは地図が読めない。というかデパートの駐車場でも迷う」
「蓮児くんはー?」
「得意なんじゃん?駐車場で迷うと、いつも蓮児が電話してきてわたしのところまで迎えに来てくれる」
「あんたのいる場所がわかるっていうのは、もはやエスパーみたいだけどね。いっつも愚痴ばっかり言ってるけどさ、いいコンビだよ。あんたと蓮児くん」
「やめてよ」
「蓮児くんとキョウダイってだけで、この学校の女はみんな乙美のこと羨ましがってんだから」
「そこがわかんないんだよねー。見てくれはいいかもよ?それなりには」
「それなり、じゃなくてさ。かなりいいと思うけど」
かなり、という部分を強調されても、とにかく同意ができないわたしは言葉に詰まる。蓮児の欠点をたくさん知っているせいで、外見についても一般的な判断ができない。
身内って不便…なのかなあ?いや、別に格好良さを知りたいわけじゃないから問題ないか。
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