よく間違われますが、わたしは姉です。

4/8

52人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
「かーわいい、蓮児くん」 四限目の日本史が自習になった教室で、透子に昼休みの蓮児とのやり取りを話す。 「わざわざそんなことを言いにこっちまで来るあたり、本当にお姉ちゃんが好きなんだねー。なんだかんだ相手するあんたも優しいじゃん」 「はあ?」 見る人が見たら、そういう姉弟なのだろうか。わたしと蓮児が仲良しだなんて、想像もできないけど。 「てか、あんた昼休みはどこ行ってたのよ?」 「あれ、言わなかったっけ?浩人のお母さん夜勤だったから今日はお弁当なくってさ。作ってあげる約束してたから、屋上で一緒に食べたの」 「平和そうなカップルで何よりですねー」 「まあまあ、妬かないの」 「べっつにー」 透子は、最近できたという理系の彼氏と仲良くやっている。でも、わたしはなんかいけ好かない。笑った顔がなんか、嘘っぽいっていうか。本人が幸せそうで何よりだとは思うけど、とにかく、わたしはちょっと苦手なタイプだ。 「なんで男は理系が多いかな」 「数学とか、空間把握力っていうの?よくわかんないけど。そういうの、男の方が優れてるらしいし。あと、地図とか読むのも男の方が得意だとか」 「詳しいね。まあ、確かにわたしは地図が読めない。というかデパートの駐車場でも迷う」 「蓮児くんはー?」 「得意なんじゃん?駐車場で迷うと、いつも蓮児が電話してきてわたしのところまで迎えに来てくれる」 「あんたのいる場所がわかるっていうのは、もはやエスパーみたいだけどね。いっつも愚痴ばっかり言ってるけどさ、いいコンビだよ。あんたと蓮児くん」 「やめてよ」 「蓮児くんとキョウダイってだけで、この学校の女はみんな乙美のこと羨ましがってんだから」 「そこがわかんないんだよねー。見てくれはいいかもよ?それなりには」 「それなり、じゃなくてさ。かなりいいと思うけど」 かなり、という部分を強調されても、とにかく同意ができないわたしは言葉に詰まる。蓮児の欠点をたくさん知っているせいで、外見についても一般的な判断ができない。 身内って不便…なのかなあ?いや、別に格好良さを知りたいわけじゃないから問題ないか。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

52人が本棚に入れています
本棚に追加