52人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
「バスケも頑張ってるし、文句なしだね」
「別に褒められたことじゃないでしょ。普通よ、普通。ていうか、毎日毎日汗だくのTシャツ何枚も持って帰ってさ。洗濯するの大変なんだから」
「別にあんたが洗濯してるわけじゃないじゃん」
スカした態度で言い放つ透子に、言葉をなくした。
そりゃ、確かにそうだけど。
それでも脱衣所に行くと、蓮児のニオイが充満してる。別に、臭いとかいうわけじゃないけど。
「でも蓮児くんの汗が染み込んだTシャツとか、高くつくだろね」
「げっ…気持ち悪いこと言わないでよ」
前の席で目を輝かせながら勝手な妄想を繰り広げる透子の椅子を、小さく蹴ってやる。
「蓮児のやつ…外面だけはいいんだから」
「イイ子だよー、本当。いっつも挨拶してくれるよ?」
「それは、猫を被ってるっていうの」
「じゃ、普段はどんなの?」
普段の蓮児だとぉ?
部活のせいで冬でも汗だくで帰ってくるし、前述の通り長風呂だし?ノックもなしに部屋に入ってくるし、テレビ見てるわたしからチャンネル取り上げるし?
「あ、昨日は食後に取っといたプリン、勝手に食べた!」
忘れてた。買って帰るように言っておくんだった。
「かーわいい」
「だから、どこが?代わってあげたいぐらい」
わたしからすれば、ただの生意気な弟。それでも不思議なのが、透子みたいに蓮児にうっとりする女の子が多いってこと。
さっき蓮児が言ってたみたいに、お嬢様に絡まれたって言う話も、多分嘘じゃない。二駅向こうのお嬢様学校の子たちだろう。
「わっかんないなー…」
「一回、蓮児くんと他人になったらわかるよ」
「じゃ、一生わかんない」
蓮児の格好良さなんて、別に知りたくないし。
最初のコメントを投稿しよう!