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⑲
朝のワイドショーで、昨夜のニュースが流れている。
結婚詐欺師が捕まったらしい。
見た事のある街並み。
見た事のある男が、顔を下に向けて、連れていかれてる。
その後…画面は切り替わり、
子供を抱いている女達が写った。
そして…
【被害者の会】の代表の女が、子供を抱っこしながら、何か話している。
スタジオのコメンテーター達は、口々に言う。
「仕事ばかりしてきた30代後半から40代の独身女性達を狙っての酷い事件ですね。
FBで、言葉巧みに口説く。
いざ会えば、既婚者なのに、奥さんとは別れる。貴女と一緒にいたいと、言葉巧みに口説く。
まぁ、背の高い爽やかな男前ですものね。
女性達は、信用しますよね。
その年代は、プライドは高いですが、でも内心では結婚したい、出産もしてみたいと思ってる世代なんです。
その年齢まで、独身で働いているのですから、お金も持っているでしょう。貯金だってかなり持っている人もいるのでは無いでしょうか!?
尚且つ、そんな女性達に、最後のチャンスかも知れない子供まで作っておいて、結婚しよう。だなんて!
彼女達は、彼を両親に会わせ報告し、
男は、身籠った彼女を心配する振りをして、
自分が代わりに家を探してきたと言っては、上手く頭金を払わせるように仕向ける。
そして金が手に入ると、消え去る。
その頃には、女性達のお腹の子供は、中絶出来ない時期に入っている。
それにしても、あれだけの人数の被害者の会の女性からせしめたお金でしょう!?
堂々と、こうして出てくる女性達以外にも、被害を受けた方が、沢山いるかも知れない。
それほどのお金を、何に使ったのでしょうね!?」
私は、テレビを消した。
何が起きたのだろう。
嘘でしょ、良君…。
暫く放心状態に陥った。
低い声、はにかむ笑顔、温かい手、広い背中、私を優しく抱いてくれた良君しか思い出せない。
良君…良君…良君…。どうしたの…良君。
会いたい。
私は、泣き崩れた。
でも…
私…
良君の事…
何も知らない。
良君との繋がり…
FBのメッセージだけだったね。
涙が涸れて、もう目からは、何も落ちて来ない。
(仕事に行かなきゃ…。)
私は立ち上がった。
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