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部屋の電灯が消えている夜の部屋に足を踏み入れた。
自分の部屋だとわかっていても身構えてしまう。
1人で二階に上がるのは、中学に入っても慣れないのだ。
揺れるカーテンからは時折、月明かりが溢れていた。
付けっ放しだった筈のパソコンはいつの間にか画面が暗くなっている。
窓が開いていた。
もう冬の始めとだけあって、部屋に風が入ってくるとかなり寒い。
風呂から出てみれば着替えのシャツを忘れていた。久しぶり過ぎて着替えも忘れたようだ。
それで寝巻きのTシャツを取りに来たが、上半身は裸のまま。階段を上っていたさっきまでは、鳥肌が立った両腕を摩って暖めていた。
しかし、その防寒役の手は今は降りて、膝の横にぴったりくっつけていた。
足がすくみ金縛りにあったかのように全く動けない。
俺の顔はきっと青い色をしているだろう。
怖かった。
誰か、俺の部屋にいる。
それも、開いた窓の辺りに。
カーテン越しの背中まで伸びた癖っ毛のシルエットには見覚えがあった。
その低い身長も、子供らしい手も、あの日と何も変わっていない。
影だけ見ても、その人物の雰囲気が伝わってくる。
カーテン越しのあの人は俺に気がついたようで、前髪を乱して振り返ると、月明かりに対比する黒い手でシャッとカーテンを一度に引っ張った。
「久しぶり、龍也」
互い違いのカールが強い髪、この時期にはどう考えても合わない袖無しの水色ワンピース、優しそうで好奇心が強そうな目。
いつの間にか俺が抜かしていた、153センチの低い身長。
夏の命日から何も変わっていない姉が、今、窓辺に腰掛けていた。
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