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すると開いたドアの隙間で目が合った。
「うわあああ!!」
俺だけが驚き、また尻餅をつく。
少女は笑ったり、謝ったりはしなかった。まるで作り物のオモチャように、笑顔が固まっている。
「早く行くよ」
そう言い、隣の部屋のドアを開けた。
勢いよく紙が流れてくる。
そう、姉の部屋には紙が沢山あるのだ。
機械の説明書、地図記号の一覧、3年前の宿題など様々だが、高さ50センチ以上の紙の山が60個以上置かれている。
それだけ量が多いのだ。
姉は文書を読むのが好きだった。
特に、クラスの名簿。あれは二重にコピーまで取って大切にしていた筈だ。
……少女の顔を覗き込んだ。
血の気がある火照った顔。
姉、そのものだった。
「……あの。あなたは……」
「ふふ、自分の姉の顔も忘れたの? 最後に会ってからまだ半年しか経ってないじゃない。」
姉、そのものだった。
姉は生きていた。
姉は、生きていた!!
抱きつきたい気持ちだったが、俺も中学生だ。
姉の、右の二の腕を両手で握った。
「……おかえり」
「ただいま、龍也」
姉ちゃんから強く抱き締められた。
目の縁がじんわり熱くなる。
……おかえり。おかえり。
しかし長くは抱き締めてくれなかった。
10秒もすると、腕を俺から離して、その先を紙だらけの部屋の奥へと向けていく。
それから、開いた扉から一筋に伸びる光だけを頼りに、姉は何か探しているようだった。
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