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探し物をしている間、俺は少し幸せな気分だった。
性に合わないが、目からポタポタと涙が滴り落ちていく。
俺はずっと、待ってたんだ。姉のことを。もう帰ってこないとわかっていたが、それでも待っていた。
きっとこの半年、どこへも行かず、一歩もこの家を出なかったのは……姉を待っていたからかもしれない。
両親が二人とも……。いや、今は一人だが、夜遅くまで働いている。もしも姉が帰って来たとしても家の鍵を開けてくれる人がいないのだ。
やっと気付いた。自分でもわからないまま、世間で言うところの引きこもりになっていたが、それは……帰らない姉を待ち続けていたということか。
姉は探し物を続けながら不意に呟いた。
「私ね……もう生きていないの」
その言葉の意味が全くわからなかった。
なら今、俺の目の前にいるのは何だよ。
そうツッコミたかった。
姉は真剣な話をする顔へ変わっていた。
「私はね……天使になったの」
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