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そして目的の物を見つけたらしく、「あった」と短く呟いた。
厚さ約3センチの分厚い紙束を俺に押し付けた。
消しゴムのカスや埃が紙の端にこびりついていて汚い。
埃と砂でザラザラした白紙の表紙。
恐る恐る捲ると、第1行目に
『天使に進化する為のレポート』
数ページ後に、
『人間の犠牲を必要とする』
『不死の命を手に入れられる』
それから、目が痛くなるような細かい文字で埋め尽くされた紙が延々と続いていた。
儀式の方法。
その効果。
詳しい説明……。
紛れもなく、『天使になれる』本気のレポートだった。
信じ難かったが、姉の真剣そうな顔とちっとも変わらない服装、事故に遭ったのに傷一つ無い体に頷くしかなかった。
ぞっとして……少女をみる。
満足そうに微笑んでいた。
「それは、私が書いたレポートだよ。ちゃんと実験は成功した。私は、不死の天使になった」
姉ちゃんは。
不死の天使になった……?
「ど、どういうことだよ、姉ちゃん」
姉は怪しく笑い、
「まさか、私が、ただの交通事故で死んだと思ってたの?」
そうだよ。葬式までやった。
交通事故で、横断歩道を渡る最中に引かれたと警察の人からも伝えられた。
その時、めちゃくちゃに泣いたから忘れるはずがない。
骨になった姉ちゃんを箱に入れたのも覚えている!
それが……ただの交通事故で死んだのでは無いというのか。
天使だというのなら、羽があるはずだ。
白い大きな羽に、天使の輪が。
姉の姿には、そんなものは何一つ無かった。
「……天使、なのか?」
「もしかして、天使の羽とか探しちゃってるの?」
躊躇いながらも頷くと、
「馬鹿ね、そんなの人間の勝手な想像よ。天使の定義に、羽も、浮いてる輪も必要ないわ」
天使の定義、か。
もう、普段ネットで馬鹿な動画しか見ない頭は、苦しい程に混乱していた。
なら、もしも。
もしも仮に、姉が天使だとしたら。
あのレポートが正しいとしたら。
姉は誰かを犠牲にしたということ。
「……もしかして……母さんを殺したのは……!!」
「そう。……今頃気がついたの?
私よ」
_______11月3日。
これが、全てのはじまりだった________。
Fin
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