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「おい、リュータ。これはどういうつもりだ。」
「それはこっちのセリフです。」
リュータはため息を吐いた。彼はこの女性のことを知っている。いや、この国の人間なら誰もが知っている。
彼女の名前はエリサ=ブリラス。ブリラス家は、この国の名家のひとつである。今の当主は警察のトップを務めており、彼女はその娘。
彼女は、将来間違いなくこの国を担う一人になるだろう。現に、エリサは二十六歳という若い年齢で、軍の魔物討伐隊の指揮を任されている。
「どうして扉を壊したんですか…。」
「私は扉をノックしただけだ。」
悪びれもせずエリサは言った。彼女は見た目さえスタイルのいい美女だが、その内に秘めている力はとてつもない。拳で高層ビルを跡形もなく吹き飛ばしたといった都市伝説まである。
「扉の強度を考えてください。魔物ゴリラに殴られたら簡単に壊れますよ。」
「お前の頭蓋骨を木端微塵にしてやろうか?」
「はい、ごめんなさい。」
命の危機を感じたリュータはすぐに謝る。
「それより、どうしてくれるんですか。また住めなくなったじゃないですか。」
実は扉を破壊されたのは二回目。他にも天井や壁、床に穴をあけられたり、窓が吹き飛んだりした。そのたびにリュータは家を追い出されるはめになった。
ちなみに、ブリラス家が家の賠償をしており、後日壊れた建物を見に行くと以前よりも豪華な建物になっている。
リュータは引っ越し先はエリサに教えていないのだが、毎回家の場所を突き止められてしまう。どこから情報を得ているのか聞くだけ無駄なのでリュータは半ば諦めている。
「それで、俺に用ですか。」
「あぁ、リュータに命れっ…頼みが二つある。」
「…命令って言いかけましたよね」
「バカな。一般市民に対して、そのような言葉をいうわけがないだろ。」
『とりあえず、一般市民の家を壊さないで欲しい』と思うリュータだが、これを口に出すと色々な過程があった後に天井に穴が空くことになるので口には出さない。
「はぁ…で、どういう頼みですか?」
「引き受けてくれるのか?」
「いいですよ。どうせ引き受けるはめになるんで。」
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