プロローグ

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ブリラス家には恩のあるリュータは、しぶしぶ依頼を受けることにした。 「リュータ、ありがとな」 「…いえ、別に」 エリサの笑顔に、リュータは目を反らす。この笑顔に何人もの人間が虜になったのだろう。エリサは男性だけではなく、女性にも人気がある。あの笑顔を見たら誰もがその人気の理由を納得してしまう。 「ほんと、中身が残念…」 「ん?リュータ何か言ったか?」 「いえ、何も。それより依頼の内容を教えてください」 慌てて話題を変えるリュータ。そんなリュータにエリサは首をかしげるが、依頼について話し始める。 「まず一つ目だが、これは父からの依頼だ。」 「ってことは、術式の解読ですか?」 「そうだ。殺人事件の現場に残された術式の解読をしてほしいそうだ。」 この世界には魔法が存在する。魔法を発動するには主に二つの方法がある。 一つは、イメージを具現化させる方法である。 例えば目の前の木を燃やす場合、どういう方法で燃やすか、どのように燃えるかなどをイメージする。手のひらから火の玉を直線軌道に放って、その火の玉が木に当たって炎をあげて燃える。そのイメージを精密に頭の中に描く必要がある。 この方法は自由に魔法を操れるが、イメージを正確に行わないと魔法が発動しない。それに何よりも、大量の魔力を消費してしまう。そのため、一部の人間しかこの方法で魔法を放つことはできない。 もう一つの方法が術式だ。 術式とは、魔法を発動する際に必要なイメージを特殊な言語や記号を記す方法である。一般的に紙などに魔法陣を書き、そこに少量の魔力を流すことで魔法を発動させる。 この方法を利点は少しの魔力で魔法が使えることにある。欠点は、記された魔法しか使うことができない点や、術式を書けるものが少ない点がある。 術式に使う言語や記号、いわゆる魔法言語と呼ばれるものは現在判明しているだけで一兆個。またそれぞれに相性などがあり、単純に組み合わせただけでは魔法は発動しない。例えば、火を表す魔法記号だけで数百個あると言われている。 そのため、術式について研究している人間ですら、人生で作れる魔法は一つや二つ、多くても片手で数えられるほどである。
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