カントリーロード

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カントリーロード

 大学四年の夏休み。親のコネで就職はばっちり。長期の休みは遊ぶためのもの。  ということで、サークル仲間と俺の四人で、アメリカ西部のドライブたびに、親のすねをかじってレッツゴー。  派手なオープンカーをレンタルし、気ままに走るご機嫌なカントリーロード。  とはいえ、所詮は田舎道。何もないから長く走れば飽きてくる。  どうせなら、街中で見かける、いかにも男慣れした美女じゃなく、素朴な田舎の美少女とかに出会って、むさくるしい野郎四名のドライブに花を添えたいところだけれど、女の子どころか、農家のオッサン一人見当たらない。  人の影も見つからないなんて、どんだけ田舎なんだよと、ぼやいたのはどれくらい前だったか。  青空を、時折白い雲が流れていく。  日射しはあるけれど、風のおかげで暑くはない。実にドライブ日和の好環境だ。  だけどもう、誰の口からもはしゃぐ声は上がらない。  助手席の友達は、とうの昔に動きを止めた。目の端で姿を窺えば、辛うじて見える、だらりと垂れた腕の様子で、もう命がないことが判る。  後ろの二人もかなり前から静かだ。多分、隣と同じ状態なんだろう。  俺ももう、意識を保っているのが辛い程なのに、手はハンドルから離れない。アクセルを踏み込んだまま足も固まっている。  怪談とかに、こういうのあったよな。夜中に道を間違えて、山とか森を延々ループで走るって話。  単に、暗いから道に迷い続けただけだろって思ったけど、これじゃ迷ったなんて言い訳はできやしない。  ただ真っ直ぐ走っているだけ。なのにどこにも辿り着けない。似たような風景なりに、同じ場所を通ったと判る道を、ひたすら前進し続けている。  清々しく晴れた空。吹き抜ける爽やかな風。絶好のドライブ条件のカントリーロード。  もう逃げ出せない俺は、命尽きるまでこの道を走り続けるだろう。 カントリーロード…完
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