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あれから2年。
決して晴れの日ばかりではなかった私たちの恋。
手を繋いで歩く日もあれば、美雪の家で散々泣き明かした夜だってある。
それでも、私は彼の言葉を信じ続けた。
付き合って間もない頃に言われた、夢物語のようなあの言葉を。
「紗弓、覚悟はできてる?」
「フン。世界一幸せになる覚悟ならとうの昔に出来てたわよ。」
「違うよ。………宇宙一だ。」
そうして今、塗ってもらったばかりのグロスが彼によって落とされる。
「好きよ、太一…。ずっと、あなただけ。」
「先に言わないでよ。僕の方が、ずっと好きだったのに…。」
木漏れ日の指す、麗らかな春の空の下。
ヴェールに包まれた自分を捧げて私は誓う。
ねえ、太一。
あなたの前でだけは、本当の私でいさせてね。
この先もずっと、ずっと…。
*
END
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