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暗がりだということもあり、目を細めて承認作業をしている間に2人は手を絡ませながらどこかへ消えてしまった。
それと同時に戻ってきた鉄平さんは満足気にお酒を2つ持っていて、一つを僕にくれると、いい子でもいたのか?なんて言いながらにやりと口角を上げている。
「ねえ。鉄平さんは、うちの部署の池田さんって知ってる?」
「あ?営アシの池田ちゃんか?」
「そうそう。さっき、あの子がそこにいたんだけど…。」
真顔でそう言えば、鉄平さんはブッと吹き出しながら、見間違いだろ、と笑ってビールの入ったグラスを口に運んだ。
「普通に考えてあの子がこんなとこに来るわけねーだろ。どっからどー見ても生粋のお嬢様体質だ。それこそ男なんてまだ知らねーんじゃねえの?」
「確かに、……雰囲気違ったかも。」
「だろ?まあでも普通に可愛いし、うちの連中でも狙ってる奴は多いけど、あの咲川が珍しく本気らしいからみんな手は出せねえでいるみてーだしな。」
「……へぇ。」
特に興味もない話題に切り替わり、ぼんやりと思いだしたのは先ほどの彼女の姿。
似ている似ていないの話をすれば似ているかもしれない。
でも、何かが違うといえば、それは確かに違っていた。
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