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この日を境に、僕の中で池田紗弓という子に対する疑惑が生まれた。
よく分からないけれど、一度抱かれた『イメージ』を覆すなんてことは相当努力をしなければ難しいかもしれない。
時々、第一印象でこういう人は苦手だな、なんて思っていても打ち解けてみると意外に気があったりなんてことはよくあるけれど。
それは、”固定観念”が生まれる前の話だ。
だから、僕の女遊びが激しいだなんて言うそのレッテルはおそらくもう掻き消せないかもしれない。
そう思うと無性に悲しくなり、目の前に座っている鉄平さんを睨んでみたけど、なんだよと、困ったように笑った彼に返せる言葉が見つからず、僕は大きく息を吐き出した。
「この際だから、もう噂通り女遊びでもしてみようかな。」
「おっ、太一がそんなこというなんて珍しいな。よし、じゃあ早速行動開始だ。」
グラスに注がれていたお酒を一気に飲み干して、立ち上がった彼につられるようにお酒を煽る。
思いだすのは先ほどのカウンターの彼女の姿。
確かめようがないこともないけれど、やっぱり見間違いだったのかもしれないと、記憶の引き出しの隅に追いやった。
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