藤原太一という、男

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しばらく待っていると、伊達メガネを掛けた落ち着いた雰囲気の店員がウォッカベースのショートカクテルをこっちに持ってきた。 「あ、ダイちゃん!今日いたんだ?」 「いるいる!ってゆーか最近困ったお客さんに付き合って毎日朝まで出勤してんだってー…。」 「へえ?僕も知ってる人?」 「いや、どうだろうね。まあもうすぐ来るよ。ってゆーかそんなことより、太一くんが女の子と2人っていうのも新鮮だね!」 「あぁ、同じ会社の子なんだ。」 仲良さそうに喋りだした2人は、賑やかに笑いながら私の知らない話を進めていく。 それは、以前ここに来たときの三好さんの迷惑話だったり、実は下戸だった松井課長のまた新しい武勇伝であったり。 まあ、それなりに面白い話もあったけれど、 基本的にその会話の中には立ち入らずに、私は愛想笑いを繰り出しながらさっさとその酒を寄越せと心の中で毒づいていた。
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