藤原太一という、男

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それからしばらくして、その伊達メガネの言う困った客が訪れたことで2人の会話は終わり、ようやく私のコースターの上にカクテルが置かれる。 それを指して、池田さんにはちょっと刺激が強いかも、なんて妖艶な笑みを零しながら。 遠まわしに早く飲めと催促してくるあたりはおよそ彼らしい。 音を立ててこの喉に流しこむカクテル。 わずかながら口内に広がる砕けた氷。 こくりとそれを飲みこんで彼を見ると、藤原太一は満足げに笑って、おいしい?と、無駄に耳元に唇を寄せて囁いた。 しかしながら、誠に申し訳ないけれど。 私はブランデーやスコッチをロックで飲む女だ。 こんなもんでもちろん酔うわけもなく、もしも彼が私を酔わせたいのだとしたら、あちらに飾ってあるヘネシーをロックであと5杯ほど頼みたい。 「でもあのクラブで見た子、本当に池田さんに似てたな。」 「世界には自分に似た人が3人いるって言うもんね。」 「そうだね、あまりに似てて池田さんかと思ったよ。」
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