プロローグ

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例えば、 私と同じ会社に勤めるお向かいの席の彼だけど。 ほとんど話をしたことがない同期の藤原太一という男は、社内でもよくその噂を耳にする。 それは、マンション営業という華々しい職業のせいなのか。 それとも、月次で何億もの巨大な額面を動かしているという仕事への取り組み姿勢が評価されているからか。 はたまた、その甘いマスクで女性社員と度重なるアバンチュールを繰り返してきたせいなのか。 まあ、理由は様々だけど。 ここまで言えば、彼がどういう人間なのかと想像できてしまえるあたりに、『イメージ』というものの大元があるのではないかと、私は思う。 ― ふ、あーぁ…。 たった今、呑気にも大きなあくびをしたのは藤原太一。 しかし、この男と親しくしている社員……というか、まあ悪友というか。 その面々もなかなかにしてスゴイのだから、噂がまた噂を呼んでしまうのだ。
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