10中八九、きみに夢中【2】

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「それで、僕の花嫁はどうして顔を見せてくれないの?」 コツコツと、高級そうな革靴を鳴らしてこちらに近付いてくる足音。 ─ほら、お父さん行きましょう。 そんな母の気遣いのあと、二人分の足音が扉の向こう側に消えていく。 静かな室内。 2人っきりの新郎新婦待合室。 「紗弓、見せて?」 そう言って、肩に置かれた手に少しずつちからが込められていく。 「たいち……。」 振り返り、俯きがちな視線を少しずつ上げた先に見える彼の顔。 細められた目元から覗く黒目がちな瞳に、私は少しだけ恐怖を感じていた。 けれど。 「あぁ、綺麗だ。……きっと、僕の花嫁が…世界で一番に………。」 その瞳に映る自分の姿に、私は身体の自由を奪われた。 そこに映る自分に見惚れてたなんてわけじゃなくて……。 その瞳が本当に私しか映していなかったから──。 「太一……。」 腕を伸ばして求める彼の抱擁。 それに小さく頷いた彼が今、私の身体をしっかりと強く抱き締めた。
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