プロローグ

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「ねえ、紗弓ってば。」 ふと声をかけられ、ぼんやりと4人の集団を眺めていたその視線を美雪に合わせると、相変わらずぼーっとしてるねと笑われた。 「ホント紗弓ってほわんってしてて、癒し系だよね。」 何がおかしいのか、小さく笑いながら私の隣で手際よく書類を束ねてホッチキスで右留めにしている彼女。 「そんなことないよ、今はちょっと考え事してただけで。」 そう言ってる間にもどんどんコピー用紙を冊子にしていく美雪は、気さくに誰とでも会話ができて、老若男女に至るまで気遣いのできる優しい子。 ひとことで言ってしまうと、誰からも愛される性格なんだろう。 でも、彼女の本当の良さはそんなところにあるのではなくて、曲がったことが大嫌いという幼児向けアニメのヒーローのような正義感と、それを貫く凛としたその目にあるのだと私は思う。 それに、彼女も彼女でなかなかモテるしね。
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