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「真琴ー、本当に卒業出来なくなるよ?」
「むー、最近すっごい眠くなっちゃうんだよなぁー。」
「コーヒーでも飲んで乗り切りなさい。」
「へーい…あ、茜!数学のノート貸して!」
昼休みの屋上。
いつものベンチでいつものように、中学からの同級生、遠野 茜と真琴は弁当を広げている。
可愛らしくふわふわとした印象の茜と、ボーイッシュな真琴では真逆だ。
その点身長は、173cmの茜と155cmの真琴では、18cmも差がある。
まったく、アベコベもいい所だ。
その茜に、いつものように心配される真琴。
数学以外はそこそこ出来るのに、勿体ないと呆れる茜に、真琴はいつもの返答をする。
そんな会話がいつもの会話。
いつもと変わらない。
何でもない時間。
真琴は、また呆れる茜に「アイス奢るので、コピーさせて下さい!」と、これまたいつものお願いをする。
二カッと甘えたように頼む彼女を相手にすると、ついつい甘やかしてしまう。
中学を卒業した時に担任に甘やかし過ぎないように、高校ではしっかりと面倒を。と頼まれたが、結局真琴を甘やかしてしまう。
そんな自分にも呆れてしまう。
だが、茜はそれが嫌ではないのでいつまでもきっと真琴を甘やかす事になるのだろう。
「そういえばさ、夢見たんだよね。」
「能天気ねー!?」
「あ、え、いや。変な感じの夢でね!?…その後、桐島先生に怒られてからもしばらく夢見てたのかなぁって…」
その発言に、茜はもう呆れて口が閉じない。
落第の危機という所まで来ているのに、未だ夢見心地の彼女に何と言っていいか分からないのだ。
「…一先ず、間違っても桐島先生の前でその発言はしないようにね。」
「し、しないよー?!そんな事したら、ほんとに卒業出来なくなる!」
想像しただけで真っ青になる真琴に、最悪の心配はしなくても良さそうだと、息を吐いた茜。
2人は、中学からこんな感じだ。
見た目は天然そうなのに、実はしっかり者の茜と、元気と明るさと運動神経が取り柄でボーイッシュな真琴。
合わなさそうな2人は、誰よりも気が合う者同士で、それは高校に入っても変わらなかった。
真琴は、高校を卒業しても関係は変わらないだろうと思っている。
それは茜にも言えることだ。
現に、2人はこのまま大学も同じだ。関係は当分変わることはないだろう。
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