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「はぁー…」
真琴は、手に数学の課題を持って部活へ向かう。
案の定、このまま数学で赤点を取り、授業も真面目に受けられないとなれば、落第点を付けざるを得なくなる。とキツく叱られてしまった。
スポーツ推薦で内定を貰っている真琴にとって、最悪の状況である。
「…なぁーんか、前より眠いんだよなぁ。急にスコンって眠くなるし…」
桐島から渡された課題を眺めて、また大きなため息をついた。
ここ数日、真琴は急な睡魔に悩まされていた。
授業でも、通学でも、部活でも。
最近所構わず眠気が襲ってくる。
それも、コックリコックリと船を漕ぐような可愛らしいものではない。
結構ガッツリ寝てしまう。
「…って言ってる間に、また眠い~」
真琴は、教室で荷物を纏めながらまた襲ってくる眠気に耐えた。
秋には最後の大会がある。
走り高跳びで自己新記録を目指す真琴にとって、部活は貴重な時間だ。
大切な時期の今、現在進行形で机に突っ伏して眠る真琴。
静かな教室に、外から運動部と吹奏楽の練習する音が流れ込んでくる。
その音を子守唄に、真琴はどんどん深く眠っていく。
まだ夏の日差しが残る中、額に薄く汗を滲ませて、深くなる眠気の中で声を聞いた。
ー 見つけた。ー
誰もいない、放課後の教室で響いた声は、静かに外の音に紛れて消えてしまう。
眠る真琴は、またあの夢を見た。
吹き抜ける風と、どこまでも広がる青。
遠くに見えるぼやけた地平線と、緑の草原。
これが、全てが始まりだった。
...fin.
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