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そしてそのマス目に収まるようにして配置されている人間。自身を含め端から三列目に人間が九人。二列目に二人、それぞれ端から二番目の位置。そして一列目に九人。
そういうつもりで見れば、あまりに馴染み深い陣容である。言うまでもない。将棋の駒の初期位置である。
「て、え、いや、え…? 本当に?」
「うん、本当。あ、なんか懐かしいな、そういう反応。初めての人って最近じゃあんまりいなかったから。ビックリだよね」
「こ、恒例行事なのか!?」
「わたしなんて、もう…何十回目かな? 常連常連。あははー」
のんきに笑う少女に唖然としながらも、あまりの超展開に言葉も出ない。少女の様子から見ても、これからまさかの殺し合いが始まるというわけではなさそうだが、しかしそういう問題でもあるまい。
きょろきょろと落ち着き無く周囲を見渡す悠樹に、少女が何かに気付いたように服の裾をちょんちょんと引っ張る。
「ほら、ちょうど始まるよ」
そう言って少女の指差す先を見やれば、盤上中央の空白地に、突如として現れる怪しい影。それは文字のようだった。曰く――
『対局開始』
との事である。
「は、え? ちょっ、ちょっと待てえええぇぇーーーっっ!!」
ちなみに、将棋において『待った』は禁じ手であり、マナー違反である。
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