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/第一手 先手・7六歩/
ロゴマークのような『対局開始』の文字が消えたかと思えば、ピコン、という音を立てて、目の前の少女の頭上に妙なマークが現れる。
それは半透明な将棋の駒の形を模していて、白地に黒い文字。巨大な『歩兵』の駒のマークが、ゆっくりとクルクル回っている。それを見て、少女が笑う。
「ほらほら、わたし『歩兵』だよ」
「マジかよ…ってうお! 俺も『歩兵』だ!」
まさかと思い自身の頭上を見上げれば、少女と同じように白地に黒文字の『歩兵』マークがクルクルと回転している。
耳の遠いと思しきおじいちゃんの頭上にも『歩兵』。その向こうには『角行』やら『銀将』やらもいる。
マス目に固定されているマークらしく、自分の位置をずらしてみてもついてきたりはしない。人間一人分くらいの大きさはあるので、遠目でも分かりやすい。
「…パチンコ屋の看板だな」
何故か妙に恥ずかしい気がしてくる。クルクルと低速回転している辺りが特に。
と、不意にピコン、というマークが現れた時の電子音が鳴る。ふと振り返れば、例のおじいちゃんがのんびりと移動していた。マークは既に一つ先に移動している。
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