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 一応見るだけはしてみようか、などと考えたのは、母親が作ってくれている夕飯まであと数十分という何をするにしても中途半端な空き時間故だったのかもしれない。少しだけ躊躇いつつ、悠樹はメールを開く。  さて何が書いてあるのやら――そんな事を考える暇も無く、メールを開いた瞬間に、パソコンの画面が暗転。早い話が、真っ黒に。  一瞬の出来事に固まる悠樹は、数秒経って声にならない悲鳴を上げて立ち上がる。 「やられたっ! くそったれめ!」   キーボードの操作は受け付けず、マウスのカーソルも出ない。やはりウイルスの類だったのか。しかも開いた瞬間に強制ブラックアウトという、近年稀に見る鬼畜&即効仕様。  やべえ、どーするよおい、とか考えていると、ブラックアウトした画面にぼわーっと何かが浮かび上がってくる。これで画面いっぱいに『プヒヒwwざまあwww』とか出てこようものなら液晶モニタを叩き割ってしまいそうな自分を理性で制しつつ、動向を見守る。 「……んん?」  と、画面に出てきたのは木目調の見慣れた正方形。八本の線が縦横に交差するそれは、いわゆる将棋盤であろう。駒は並んでいないようではあるが。  さて、メールを開いたらいきなりこんな画面とは。やはりというかただのメールではなかったのか。  恐々としながら動向を見守る悠樹ではあったが、次の画面がなかなか出てこない。パソコンのインジケーターは緑が点灯したまま点滅しない。とうとうフリーズしたかと強制終了キーを押そうとして、  ――『ようこそ、魅惑の将棋ワールドへ』  うさんくせえっ、と叫びそうになる。悠樹の眉もまた見事にへの字に歪む。  ぼわーっと浮かび上がったゴシック体太文字の色はまさかの紫と濃緑のマーブル。今時場末の占い屋だってもう少しマシな色彩の看板をかけるだろうというレベルだ。
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