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どうしたものやら、悠樹は奇妙な表情を浮かべる。
ウイルスの類にしては、少々風変わりである。詐欺やらスパイウェアにしてもやり口が奇妙だ。悠樹はと言えば、ぶっちゃけ将棋というよりは、この変なメールの意図が気になり始めた。
迷うこと数分。君子危うきに近寄らずという格言があるが、朝丘悠樹という男は君子ではなかった。むしろ、どちらかと言えばアホだった。
ついつい魔がさしてマウスカーソルがボタンをクリック。
やっちまったよおい、という軽い後悔が襲ってくる。その感覚に、うへへ、と薄ら笑い。マゾ気質もあるのかもしれなかった。
鬼が出るか蛇が出るか、と思いきや、出てきたのは別の画面。八種類の将棋の駒が並んでいて、その下にはそれぞれ簡単な説明文が現れた。
画面に表示された駒は、左から順に『王将』『飛車』『角行』『金将』『銀将』『桂馬』『香車』そして『歩兵』。これが将棋の駒のオールスターキャストである。ずらりと並んだその駒の上部に小さなメッセージボックスが現れる。
――『あなたの好きな駒を選んでください』
変なことを聞いてくるな、と首を傾げる。
別に返答に困るようなものでもないが、しかしそんな事を聞いてどうするんだと問い返したくなる質問だ。この駒を選んだあなたは何とかタイプ、とか言ってくるのだろうか。
まあ、どうせ大した意味はあるまい。そう結論付けて、あまり迷うでもなく一つの駒を選択する。悠樹にとって好きな駒は、昔から決まっていた。
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