第1章

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 一人でした。その部屋では、私は一人ぼっち。  暗がりの中で息を潜めて、静かに、それこそ自身が空気なのではないかと錯覚するくらい、じっとその場に立っています。  どうしてこんなことに? なぜ私はここにいるのでしょう。  その場に立ちながら、何度この自問自答を繰り返したかわかりません。ただ、私は何度目かもわからないこの疑問に答えます。  全ては――愛ゆえに。  顔が赤くなったことでしょう。体を沸かす火照りを感じました。今すぐ叫びたくなりました。顔を手で覆って、それこそその場で悶えてしまいたくなる衝動に駆られます。  でも、耐え忍びます。今にくる、もっと大きな感動を味わうために、こんなことで騒いではいられません。  一度落ち着きましょう。冷静にならなくては。さもないと、ちょっとしたことで騒ぎ立ててしまいそうになります。  私は今、喜びと悲しみの間にいる。悲しみを深く思い出しましょう。そうすれば、落ち着いてくるはずですから。
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