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ぼんやりと意識が戻ってきます。空想に耽っていて、目を開けたまま夢を見ていたようでした。
「懐かしいこと、思い出していました」
視線を下げると、つぎはぎの頭が私の足元に転がっています。大分痛んできているから、そろそろ新しいものを継ぎ足さないといけません。
兄さん、そうふてくされないで? 私、愛したい人ができても、兄さんのことは大好きだから。
お父さん、あんまりふざけすぎちゃ駄目だよ? え? そうだね、私も緊張しすぎているのかもね。
愛おしい兄と父は、一つになって私を今もなお愛し続けてくれています。兄の眼と右耳、父の鼻と口、左耳。
これほど愛に満ちた家族はいません。あとは、この素晴らしい愛の結晶に見合う体だけ。
足音が聞こえる。来た。心臓が高鳴る。鍵を差込み回る音、そしてドアが開き、歩いてくる、近付いてくる。
最高潮の緊張が、私を包みます。電気が付き、彼が私の眼前に背を向けて立っている。笑みを浮かべて、彼を出迎えます。手に持った斧を振り被って。
「おかえりなさい――」
一つになりましょう? あなたの全てを愛に変えて。そう、これは始まり。もっともっと、愛を集めなきゃ。最高の愛を生み出すために。
そう、これが全ての始まりだった。
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