1人が本棚に入れています
本棚に追加
ーーー目がさめた俺は、下校放送を聞いた。
「え……」
慌てて美人教師との会話のあとのことを思い出す。
たしかあの後……もう一度寝ることにして…午後の授業の前には起きて教室に戻るつもりだった筈だ。
……なのに。
白藍色のカーテンは、夕陽の色に染まっていた。
窓の外も、放課後の生徒達の声で賑やかになってきている。
「嘘だろ……」
思わず呟く。
どうやら丸々1日寝過ごしてしまったようだった。
この後、荷物を取りに教室に戻る必要があるが、出会ったクラスメイトに一体何といえばいいのだろうか。
恥ずかしいにも程があるぞ。
「……とりあえず……起きよ」
おおきくため息をついてから、ゆっくりと起き上がる。
座ったままかけ布団をたたみ、スリッパに足をかける。
そしてようやくよいしょと立ち上がった俺の目の前に…白衣の女性が立っていた。
「一ノ瀬君、おきた?」
驚く俺に、その女性はクスクスと笑いながら話しかけてきた。
「調子はどう?」
さっきの美人教師……ではなかった。
だがこの女性もかなりの美人だ。
「あっ………大丈夫です!…すいません、寝すぎちゃったみたいで」
仮病に懲りた俺が素直にそう言って謝ると、彼女は
「いいわよ、ぐっすり寝てたから起こすのも可哀想で………ごめんね」
と言ったが、すぐにニヤッと笑い、
「起こした方がよかった?」
と言った。
そして、ぐいっと近寄る。
顔を至近距離で覗き込まれ、思わず赤面。
「~~~!」
真っ赤になった顔を見られたくなくて、さっと顔を背けた。
俺って………なんかチョロイ…。
「えっと……大丈夫です…おかげですっかり元気になったんで……はは」
目をそらしつつ、必死にそう答える。
なんだこの人、近すぎるだろ。
だが、俺の内心の焦りなんてまったく知らない彼女は、
「そ!なら良かった!」
また二カッと笑った。
最初のコメントを投稿しよう!