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わたしはその大海原を漂っていた。
海面よりも少し下で、水の中から空を見上げていた。
青い空は、なぜ青いのだろう。
水中から見上げる海面はゆらゆらと揺らめき、陽光は水面で屈折して私の元へと届く。
とめどなく注がれる光は、わたしの身体に当たり再び屈折して、きっと、もっと海の深いところまで行ったのだろう。
わたしはこの海がどんなに深いか知らない。
海が荒れ狂う時、わたしは波にのまれて天と地も分からない程に、この身体は弄ばれる。
ただただ波間を漂うばかりのわたしには抗う術も、力も、欲求さえも無く
波が鎮まるのを待つばかり。
だからわたしは海の深さを知らなかった。
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