10人が本棚に入れています
本棚に追加
「こんなクラゲ見たこと無い。おまえ、どっから来たの?ずっと漂ってた?海の中めっちゃ綺麗なの知ってる?見せてやるよ」
おかしなニンゲン。
長いこと海を漂っているわたしに、海の中見せてやるよって……。きっと私の方が海のことは知ってる。水中から見上げる海面が美しい事も、私の身体を通り過ぎていく陽光が何度も屈折することも、そして荒れ狂う海が恐ろしいことも。
けれど、わたしは海の中を見たことが無かった。いつも海面を見つめて漂うばかりだった。
彼は有無を言わさず、わたしを連れて海中へ潜る。
網の中から、わたしは海中を見つめていた。
白の砂がどこまでも続く。
屈折した光は海底の砂をキラキラと輝かせていた。
色とりどりの魚たちが泳ぎ回る。
ひらひらと、くるくると。
白の珊瑚を中心に踊る。
青や赤や紫、黄色に黒。
降り注ぐ光が彼らを祝福した。
どう?
そんな顔をして彼はわたしを見る。
最初のコメントを投稿しよう!