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「そろそろ出るか。」
「おー。」
12時を過ぎてようやく腰が上がる。
緊張していることが陽介にばれないようにいつも通りにしているのがやっとで、これ以上何か喋ったら動けなくなりそうだった。
たいした物は入れていないはずなのに、カバンが重く感じる。
エントランスを抜けて駐車場へ行くと、すぐに陽介の車が見えた。
「相変わらず目立つ車だな。」
「女の子にはあまりウケないけどね。昔から憧れてた車だから仕方ないよね。」
エンジンをかけながら陽介は笑う。
正直言って真っ赤なスポーツカーを買った時はびっくりしたが、子供の頃に観た映画に憧れて、車を買うならこれと決めていたようだ。
陽介が女性ウケを狙わずに持ったものはこの車だけだと思う。
女の子が隣にいるときには見せない少年のような笑顔が、学生時代を思い出させる。
中学1年の時にはすでに女子と男子への態度の違いは確立されていて、初めて見たときは『嫌な奴』だと思ってた。
知り合っていくうちにわかったことは、女の子に好かれたくて態度を変えているんではなく壁を作っているということ。
遊ぶだけの子は沢山いるが、自分のことを好きになる子には手を出さないということ。
付き合う気がないのに気を持たせるのは悪いからと言っていたが、よくわからなかった。
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