branch 2

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電車に20分も揺られると、海と民家しかなかった町並みからビルが立ち並ぶ繁華街へと景色が変わる。 子供の頃は普通だと思ったが大人になってみると、自分の育った町が田舎だったんだなと実感する。 当たり前にあった潮の香りや子供達の笑い声が大切なものだと気付いた時には、窮屈な空に見慣れていた。 『少し歩いたらgraceっていうお店があるから、そこで7時に待ち合わせね。』 茅乃の言っていた通りに電車を降りてしばらく歩くと、ビジネス街とは少し場違いなおしゃれな店があった。 「いらっしゃいませ。」 「予約している嶋です。」 「お待ちしておりました嶋様、こちらへどうぞ。」 クラシックな扉の中は、洋画さながらのバーカウンターに少し暗めの店内で、ここがオフィスビルの立ち並ぶ街の中だということを忘れさせる。 普段は居酒屋ばかりで、オシャレなバーと言うのはなかなか足を踏み入れがたい。
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