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茅乃のステージが終わるまで隣に陽介がいることをすっかり忘れ、30分ほど聴き入って気づいた時には、ボトルで置いてあったはずのシャンパンが空になっていた。
「綺麗だったなーかやちゃん。まさかお前の待ち合わせ相手がかやちゃんとは、予想してなかったわ。」
「俺も、まさかステージから出てくるとは予想してなかったわ。」
歌い終えた茅乃が、上着を着て出てきた。
他のテーブルの客と会話をしたり、握手をしながらこちらへ向かってくる。
「お久しぶりです嶋くん、陽介くん。」
『嶋くん』の響きに、若干の壁を感じつつ軽く挨拶を交わす。
「おめでとう。夢叶ったんだな。」
「ありがとう。ここのマスターがいい人でね、なんの経歴もない私を歌わせてくれてることに感謝してる。」
嬉しそうに笑う顔に曇りがなくて、安心してるはずなのに何故がモヤモヤする。
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