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あそこだ。
部屋内を見渡しながらさらに進むと、黒いどっしりと重量感のある箱が目に入り、そちらに歩み寄った。
そして、何の迷いも、手間も掛ける事無く、そっと箱の扉を開く事に成功する。
俺はそこでようやっと緊張が溶け、体から力が抜けた。そして、一人静かにほくそ笑んだ。
──余裕だったな。
素早く持てる分だけ取り、元通り扉を閉じると、踵を返す。
任務は無事に完了。
この高揚感は、何とも気持ちが良い。こんなに簡単なら、明日からも獲物を見定め、続けるとしよう。
これが全てのはじまりだった。
────。
「ほらタカシ!! いつまでも嫌がってないで、さっさと歯医者さんに治療して貰うわよ!!」
「うわぁぁあんっっ嫌だぁぁぁぁあああ゙あ゙あ゙あ゙!!!!
嫌だよぉぉお゙お゙お゙っっ母ちゃぁぁぁあ゙あ゙あ゙あ゙んんんっっ!!!!!!」
「そんなワガママ言って……全く、最近子ども部屋のゴミ箱のゴミくずが増えていると思ってたらこの子は!
あんたが夜な夜な冷蔵庫漁って、お菓子食べるのがいけないんでしょうが!!!!」
医療器具片手に、迫り来るマスク姿の人々。
──恐ろしい闘いの、幕開けである。
(了)
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