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「うっ!?」
突然の衝撃に、睡眠状態から引きずり出され、覚醒する。
その直後、迫り来る激しい傷みを脳が認識し、俺は耐えきれずに体を丸めた。
体が打ち震える。
とてもじゃないが、平静では居られない。
「あっ……、ぐっ……」
シーツを握る手に、力が籠る。
痛みのあまり、機能する事を拒む脳を鞭打ち、昨日までの行動を思い返した。
────。
草木も眠る丑三つ時。
不気味なくらいに静まり返った空間で、時折聞こえくる音は、名前も分からない虫の鳴き声と、廊下をひたひたと忍び歩く俺の足音だけ。
空に確かに浮かんでいるはずの月まで睡眠中なのだろうか。月明かりが弱々しく、俺は壁伝いに手探りで進んでいた。
それにしても、今日は何だか冷える。薄暗い所為もあるのかな。
ただでさえ緊張で体が強張っているというのに、衣服の縫い目を通り越して寒さが刺し貫いてくるものだから、余計に体が固くなる。
そんな事を考えていると、やがては扉の前に辿り着いた。
ゆっくりと、ドアレバーを下ろす。
扉の開くキィッという音が、妙に大きく響いた。
息を潜め、中の気配を念入りに窺う。
人の気配は────しない。まあ、当然と言えば当然の事。事前に、この時間誰もいない事は調査済みだったのだから。今頃きっと夢の中だ。抜かりは無い。
そうと分かれば、僅かに開いた扉の隙間へと、体を滑り込ませた。
──ふぅ。
ホッと一息。
だが、まだ油断は出来ないから、警戒は怠らない。
中はさらに暗かった。伸ばした手先が、目視出来ない程。
ここで、室内の電気スイッチを探しオンにしたいところだが、万一明かりを付けて誰かに見つかりでもしたなら、せっかくの苦労が水の泡だ。
その時には、それなりの処理を行う必要がある。
だから、電気は付けずに素早く──しかし物音は立てないよう最大限の注意を払い、迅速確実に、任務を遂行する。
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