翼が二羽

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 一応会話は成立してるみたいだから、このまま続けよう。女は眉をひそめて変な顔をしてるが、さっきまでと違い会話が弾みそうな予感はする。 「その内、孤立する子が出てくるよ。私は三人出来たけど」  まるで、鬼ごっこか、かくれんぼみたいな言い方をする。  でも今時、高校生にもなってそんなことしねぇよなー。三人ってのは何だ?  まだその <ぼっち> とか言う遊びのルールも知らず、どんなゲームなのかも分からない俺。ここで『知りませんでしたーッ! 教えてくださーい!』などと泣き言を吐くのも俺の(しょう)に合わない。  まだ <知ったか> つまり、知ったかぶりをして話を合わせる作戦で、刑事のように会話を引き伸ばした。 「ほーっ三人か。やるじゃーん」 「──? やるじゃんとか、言ってる場合じゃないんじゃない?」  そう言って女はニヤリとしてる。なかなか会話が弾んでいるな。この調子だッ。 「そうだなー。うん。その通りだよ」  相槌(あいづち)という大人の嗜み、社交辞令を披露してやると、女は、 「はぁ? あんた自分の心配でもしたら? ぼっちになったら話しかけないでね」  などと、また難しい言語で返してきた。  どういうゲームだ? スマゲーとかいう奴か? 俺ん家は貧乏だが、スマホーくらいは持つ予定はあるッ! それともスカイプーのことなのか? 「話しかけたら負けなのか? そのゲームは」と思い切って聞いてみた。 「負けじゃなくて、負け組み! ただし、一人”ぼっち”だけどね」  よく分からなかった……。  まあいい。 「俺さー。家貧乏だけど、プリペイド式のスマホーなら持つ予定あんだけーどー」  へへっ。言ってやった。 「ふーん。で?」  これで話は終わりだ。  授業に集中したいんだとかで勝手に話を終わらせやがった。  あとで阿久津に聞いとかないとな。  でも一応ぼっちという言葉を教えてくれたから礼だけは言っとかないとな(意味はあとで調べる)俺は礼儀を重んじる男だから。  だけど、この女は八木さんのように行儀良くないから、さんづけはしてやんねー。 「如月(きさらぎ)サンキューなッ」  そう言ったら、呼び捨てにイラっとしたのか? うぇーッ! という顔をしやがった。  礼儀の知らん女だ。そんな態度の女は、こっちから、うぇーッ! だよ。
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