翼が一羽

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 この前、中学の卒業式が終わったと思ったら、もう入学だ。  卒業……それは(はか)なくも、夢と希望に満ち溢れ、ちょっぴりセンチに、ちょっぴりこれから起こる新たな門出に胸をワクワクさせて……させて……させ。  ∽∝∽∝∽∝∽∝∽∝∽∝∽∝∽  野郎どもは、半分は適当におちゃらけながら、半分は卒業の雰囲気に浸り、それでいて気軽い感じで記念撮影なんかを(たしな)んでいたが、冗談じゃない! なんであんな白い花を胸につけるんだ。縁起でもねぇ~。  ティッシュで作った安っぽいバラを下級生に付けられる時に『俺はいいよ』と言っても付けようとするから、何度も断ったら、始めは冗談だと思って笑ってたのが、俺の本気度を見抜いてからは『私だけ付けなかったら……』と泣きそうな雰囲気を醸し出し始めたので、年下のレディを泣かせちゃ悪いと『お前だけは特別だからな』と肩をポンと叩きウインクして、俺は甘んじてあの屈辱を味わった…………のが、まるで昨日のことのようだ。  女子は『絶対に忘れないから!』『私のことも忘れないでね~!』なんてことやってたけど、頭の良い奴や私立に通う奴以外は、この中学から進学するのは八割方ここの高校だ。アホらしい。  まだ、女子になんか言われないかなー。告白されたらどうしよー。ボタン取られるかな? なんて時代錯誤なソワソワ感を出してた野郎どもの方が、俺にはよっぽど純粋にマヌケだな~と清々しいくらいだった。  ∽∝∽∝∽∝∽∝∽∝∽∝∽∝∽  っという訳で──。  俺は今、昼飯のあと、ずっとこの廊下をトボトボ歩いている。    理由は簡単だ。  俺は方向が、人よりも、ほんの少しばかり音痴に生まれついたので、自分のクラスがどこだったか忘れた──から、ちょっくら探してるわけだが……。  組プレートを見たり、開いた窓から中を覗いて同じクラスの奴はいねがぁと、ジロジロ確認しながら歩いてる。けど、クラスの半分も顔が一致してない。まだ覚えてないからだ。  どうやら俺の新しい組は <一年三組> と言うらしい。  ピカピカだッ!
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